
| むかしむかし、ずっとむかしから、大杉谷(おおすぎだに)の深山には竜神さまが住んでいると言われてきました。 とても荒れた嵐の夜がありました。はげしい風もおさまり、いく日かたったある日のこと、宮川の水の流れが急に早くなったかとおもうと、大きな丸太がゴーとその勢いにのって、流されてきました。 昼田の河原でそれをみていた村人は、 「ありゃりゃ」 と驚いて、その丸太を拾いあげ 「こりゃ薪にいいのう」 と家まで運んできました。さっそくおので丸太を割ろうとすると 「うーん」 と言ったきり、顔が青くなり倒れてしまいました。家の人がびっくりして、床に寝かせましたが、ぶるぶると震えているだけで薬を飲んでも効き目がなく困ってしまいました。 そんなある日、山野を歩き仏道の修業をしている山伏が通りかかり、村人が丸太を割ろうとしただけで病気になったことを聞きました。 「わたしがまじないをしてあげよう」山伏は村人の枕元に座って 「ナムアビラウンケンソワカ」 と呪文(じゅもん)を唱えました。すると山伏に神さまがのりうつったかのように 「あの丸太は、竜神さまの枕じゃ。大切にまつられよ」 とお告げがありました。 家の人は、さっそく丸太をまつり、病気が治りますようにと一生懸命祈りました。 すると村人は顔色も良くなり、からだの震えもとまりもとの元気な姿になりました。 それからは、この枕は龍の枕として、村人たちがお参りするようになり、この枕にお参りするとどんな病気でも治ると言われ、信仰を深めたということです。 今は、昼田、中須(なかす)を歩いても、まぼろしの龍の枕になってしまいましたが、このお話だけが古老から語り継がれています。 |